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2026/01/23
生物学的製剤におけるウイルス検査による安全性確保について
・感染性製品が流通した場合に想定される影響範囲
医薬品の品質規格は、有効性と安全性を支える基盤です。近年、品質や安全性に対する要求は高まっており、製造から試験、供給まで一貫した管理が求められています。この傾向は、生物起源由来製品やバイオテクノロジー応用医薬品といった生物学的製剤の増加によってより顕著になってきています。
製造工程におけるウイルス等の汚染リスク管理は、製品の安全性確保に不可欠です。ウイルス検査で取り違えや混入、判定・記録の誤りが生じ、本来検出すべき陽性が見逃された場合、その影響は企業内部にとどまりません。製品が流通すれば、健康被害のリスクが生じ得るほか、回収や行政対応を伴う事案へ発展する可能性があります。
本記事では、ウイルス検査に起因するリスクの考え方を整理したうえで、生物学的製剤におけるウイルス検査の重要性についてお話します。
生物学的製剤のウイルス混入リスク
ウイルス等による汚染は、原材料から製造工程、医療現場での取り扱いに至るまで、複数の段階で生じ得ます。そのため、各段階での管理策を組み合わせた包括的な汚染管理が求められます。
ヒト由来で病原性を持つ感染性ウイルスとして注意すべきものには、エイズウイルス(HIV)、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-Ⅰ/Ⅱ)などがあります1)。生物学的製剤では、これら感染性因子の混入可能性を踏まえた安全対策が求められます。
製造段階では、各工程においてウイルスの存在の有無を検出するウイルス試験が行われます。しかしながら、サンプルサイズに依存した検出限界、対象ウイルスの特異性・感度の制約などから、陰性結果のみでウイルスの存在を完全に否定することはできません。さらに、ウイルス試験は一般に既知の検出対象を前提として設計されているため、未知のウイルスが存在する場合、現行の試験では検出が困難です。したがって、生物学的製剤の製造過程では、ウイルス混入リスクを完全には否定できないということを念頭に置いた上で、安全対策を講じる必要があります。
感染性製品が流通した場合に想定される影響範囲
感染性を有する可能性のある製品が市場に流通した場合、回収・出荷停止、通知など、企業に広範な回収実務対応が求められます。
厚生労働省は医薬品・医療機器等の回収が行われる際に、当該製品がもたらし得る健康被害の深刻度に応じて、回収クラス分類を定義しています。これらの回収情報は、厚生労働省が示す回収クラス分類の考え方に基づき、個別の回収案件ごとに、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の回収情報ページで公開されています2) 。
| クラス I | その製品の使用等が、重篤な健康被害又は死亡の原因となりうる状況をいう |
|---|---|
| クラス II | その製品の使用等が、一時的な若しくは医学的に治癒可能な健康被害の原因となる可能性があるか又は重篤な健康被害のおそれはまず考えられない状況をいう |
| クラス III | その製品の使用等が、健康被害の原因となるとはまず考えられない状況をいう |
感染性製品が流通した場合、健康被害の発生にとどまらず、企業や医療機関には被害者対応、回収対応に伴うコスト負担、社会的信用の低下など、広範な影響が生じ得ます。さらに、製品や医療への信頼が揺らぐことで利用行動が変化し、影響が社会全体へ波及する可能性もあります。安全な製品を供給するためには、工程全体を通じた多層的なリスク管理に加え、迅速かつ適切な判断と情報提供が必要です。
セルプロジャパン株式会社の取り組み
セルプロジャパン株式会社では、厳しい検査基準をクリアした製品のみを提供しています。製造では製造工程検査と最終製品検査に様々な検査規格を設けており、これらをすべてクリアした製品のみが出荷対象です。さらに、自社CPCの設置も完了し、現在は施設登録中であり、さらなる品質保証体制の強化を進めています。
参考文献
1)医薬品医療機器総合機構(PMDA)., 日局生物薬品のウイルス安全性確保の基本要件, https://www.pmda.go.jp/files/000270840.pdf.
2)医薬品医療機器総合機構(PMDA)., 回収情報, https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/calling-attention/recall-info/0002.html.