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2024/05/20

血液加工物(PRP)による治療法について:再生医療等の安全性確保に関する法律

ポイント
・再生医療等安全性確保法とは
・再生医療の分類について
・PRP療法の区分

再生医療は、これまで治療法が存在しなかった難治性疾患の治療が可能になるなど、新しい医療技術として期待されている一方で、既存の治療法と比べてデータが少ないことから、その安全性を確保することが必要になります。令和6年現在、再生医療に関する規定は厚生労働省による再生医療等の安全性の確保等に関する法律(以下、再生医療等安全性確保法)によって定められています。多血小板血漿(以下、PRP)療法は、ヒト由来の血液加工物を使用した再生医療技術であることから、再生医療等安全性確保法の対象になります。本記事では、再生医療等安全性確保法におけるPRP療法について紹介します。

再生医療等安全性確保法とは

再生医療の社会実装に伴い、実用化を促進する制度的枠組みとして、再生医療等安全性確保法が2013年11月20日に成立し、同月27日に公布されました1)。再生医療等安全性確保法は、再生医療等を安全かつ迅速に患者に提供することを目的として定められた法律です。臨床研究および自由診療下において、再生医療治療を行う場合に遵守すべき基準が記載されているだけでなく、生命倫理への配慮、倫理面での課題についても言及されています。再生医療等を提供しようとする場合は、再生医療等安全性確保法で定められている再生医療の分類に従って、あらかじめ再生医療提供計画を既定の届け出施設に提出することが義務付けられています。

再生医療の分類について

再生医療等安全性確保法において、再生医療はその安全性を確保するため、細胞の採取等の手続き、提供医療機関の基準、医療のリスクに応じた分類ごとに第1種、第2種、第3種に分けられています(図1)2)

第1種: これまでヒトに実施されたことが極めて少なく、既知・未知を含めてリスクが高いと想定されるもの (ES細胞・iPS細胞・他家の幹細胞等)
第2種: 既にヒトに実施されたことがあり、中程度のリスクが見込まれるもの (自家幹細胞等)
第3種: 細胞が持っている元々の機能を利用するなど、大きな操作を加えないため、リスクが低いと想定されるもの (加工を施した体細胞等)

再生医療等を提供する場合には、初めに再生医療等安全性確保法で定める再生医療等のリスク分類のフローチャートから、提供予定の治療が何種に該当するのかを確認し、該当する種別ごとに異なる申請を行う必要があります(図1)2,3,4)

図1. 再生医療等のリスク分類のフローチャート<sup>2)</sup>

図1. 再生医療等のリスク分類のフローチャート2)

PRP療法の区分

ヒト血液を遠心分離することによって回収されるPRPは5)、国内の臨床研究や自由診療下において実施される再生医療提供計画のうち、全体の約65%を占める最も提供数の多い再生医療です(2022年時)5)。治療用途によって第2種、または第3種に分類されており、第2種では関節症治療をはじめとした整形外科疾患治療が約80%、産婦人科における不妊症治療が約20%となっています(図2. a,b) 5)。第3種では、歯科領域での治療の利用が半数以上を占め、その他整形外科治療、美容整形外科治療などがあります(図2. c,d) 5)

図2. 再生医療等安全性確保法に基づく臨床研究および個人クリニックにおけるPRPの使用目的と分類<sup>5)</sup>a.臨床研究における第2種, b.個人クリニックにおける第2種, c.臨床研究における第3種, d. 個人クリニックにおける第3種

図2. 再生医療等安全性確保法に基づく臨床研究および個人クリニックにおけるPRPの使用目的と分類5)
a.臨床研究における第2種, b.個人クリニックにおける第2種, c.臨床研究における第3種, d. 個人クリニックにおける第3種

【引用】
1. 辰井 聡子., 再生医療等安全性確保法の成立-医療・医学研究規制を考えるための覚書-, 立教法務研究, 第7号 151-177, 2014.
2. 五十嵐友香, 佐藤陽治., 再生医療・細胞治療の規制および開発の現状と課題, 日薬理誌, 2018.
3. 厚生労働省., 再生医療等の安全性の確保等に関する法律について, https://www.mhlw.go.jp/content/000679801.pdf.
4. 日本再生医療学会., 再生医療PORTAL, FAQ, https://saiseiiryo.jp/faq/detail/post_5.html.
5. Anna Arita and Morikuni Tobita., Current status of platelet-rich plasma therapy under the act on the safety of regenerative medicine in Japan, Regen Ther, 2023.

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