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2023/11/09

細胞培養工程を含む最終製品の安全性について:ウシ胎児血清(FBS)

ポイント
・再生医療等製品及び特定細胞加工物の安全性
・ヒト幹細胞由来培養上清液及びエクソソームの安全性ヒト間葉系幹細胞培養上清の安全性
・FBS使用のリスク

細胞を培養するための培地には、細胞の栄養素となる複数種類の添加物を加える必要があります。しかしながらこの栄養素の中には、ヒトの身体に害を及ぼす可能性がある物質が含まれています。
第一回では、培地の代表的な栄養素であるウシ胎児血清(FBS)についてお話します。

一般的な幹細胞培養培地には、栄養素としてFBSが10%~20%添加されるケースがあります。一方で、異種の動物由来成分であるFBSには使用上のリスクを勘案する必要があります。

 

 

FBSを使用するリスク

異種因子に対する免疫応答

異種動物由来のタンパク質が細胞質に保持されるため、ヒトの生体内に入った際には重篤なアレルギー反応を引き起こす可能性があります(図1)。1)


図1,ヒト骨髄由来間葉系幹細胞のFBS含有培地培養におけるにおけるN-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)による異種抗原応答
A)FBS存在下で培養するとNeu5Gc(緑色)の発現が見られる。B) 細胞表面の抗原部位を失活させることでNeu5Gc発現が消失する。C) ノイラミニダーゼ処理によるシアル酸結合部位の作用確認。D) 一次抗体のみを加えたネガティブコントロール。E) マウスフィーダー細胞上でヒトES細胞を培養した場合のNeu5Gc発現。

 

有害物質による汚染

ウイルスや細菌、変異型プリオンなどの汚染物質が含まれている可能性があり、人獣共通感染症のリスクがあります。特に、FBS使用を検討する場合はBSE「洗浄国」のものであるかどうかや、ガンマ線等による滅菌処理を実施しているかどうかをチェックすることが極めて重要です(図2)。2)


図2,間葉系幹細胞からセレクトームを得るまでの手順
上清液に含まれるセレクトームを得るまでの手順において、産生段階で上清液の成分に影響を与えうる因子が多々存在している。

 

品質ロット間のばらつき

動物由来の血清は個体毎に品質のばらつきが生じ得ます。このような添加因子レベルでのばらつきが結果として最終プロダクトのばらつきにつながる可能性があります。血清を使用する場合は製品規格を厳密に設けて品質間のばらつきを最小限に抑える努力が求められます。

 

セルプロ社製品の特徴

セルプロジャパン社ではFBSを使用しておりません。隠れたリスクや品質間ロットのばらつきを最小限に抑えるために完全無血清での培養に取り組んでいます。

 

【引用】
1) Annamari Heiskanen et al., N-Glycolylneuraminic Acid Xenoantigen Contamination of Human Embryonic and Mesenchymal Stem Cells Is Substantially Reversible, Stem Cell, 2007.
2) B Chouaib et al., Towards the Standardization of Mesenchymal Stem Cell Secretome-Derived Product Manufacturing for Tissue Regeneration, Int J Mol Sci, 2023.

セルプロジャパンとは

セルプロジャパン株式会社は再生医療を中心に
新しい医療の可能性を追求する企業です。
私たちの対象分野は再生医療、医薬品、化粧品など多岐にわたり、各分野における研究開発に日々取り組んでいます。

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