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2023/12/18
細胞培養工程を含む最終製品の安全性について:抗生物質
目次
・ヒト幹細胞由来培養上清液及びエクソソームの安全性
・抗生物質使用のリスク
第三回では、細胞培養培地に添加される抗菌剤である抗生物質の使用リスクについてお話します。抗生物質とは、細菌や微生物などの増殖抑制に使用される薬のことです。再生医療製品は、ヒトから生きた細胞を採取して使用するため微生物混入のリスクがあります。微生物による細胞培養中の汚染は、製品の開発において大きな問題となります。このリスクを取り除くため、培地に抗生物質を添加することが有効な手段になっています。しかしながら、抗生物質がヒトの身体の中に入ると様々な副作用が発生する可能性があります。
抗生物質を使用するリスク
細胞培養培地に添加される代表的な抗生物質の例として、βラクタム系抗生物質(アンピシリン)、ペニシリン系抗生物質(ペニシリン)、アミノグリコシド系抗生物質(ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン)などがあります1,3)。構造の違いや微生物への作用経路によって分類されており、各物質においてヒトにおける副作用が報告されています。
腎機能障害
抗生物質による有害事象としては尿細管機能障害や、間質性腎炎の発生が報告されています。特にβラクタム系抗生物質は、発生頻度は低いものの用量に関係なくほとんどすべての薬剤が薬物(過敏)性間質性腎炎を引き起こす可能性があります (図1)1,2)。
図1, 急性間質性腎炎の病因2)
急性間質性腎炎患者の発病原因
免疫応答
もっとも重篤な副作用としてはアレルギー反応があり、ペニシリン系抗菌薬では1000人に2~4人の割合でアナフィラキシーショックが発生すると言われています3)。急性の症状として、ペニシリン投与後2時間以内に蕁麻疹や血管浮腫などの臨床症状が現れます(図2)。またβラクタム系抗生物質では、遅発性蕁麻疹や剥離性皮膚炎などの皮膚症状の発生が報告されています4)。
図2. 抗菌薬の副作用3)
セルプロ社製品の特徴
セルプロジャパン社では最終製品に抗生物質が漏れこむ可能性を排除するために、抗生物質不含培地での製造に取り組んでいます。微生物汚染の無い安全な製品を製造するために、最終製品では無菌検査やエンドトキシン検査、各種ウイルス・マイコプラズマ検査による厳しい検査基準を設けており、これらすべてをクリアした製品のみを出荷しています。
【引用】
1) 玄番 宗一, 薬物による腎機能障害の病態と発症機序, 日薬理誌, 2006.
2) Manuel Praga and Ester Gonzάlez, Acute interstitial nephritis, Kidney Int, 2010.
3) 西 圭史, 抗生物質の基本知識, 日臨麻会誌, 2017.
4) A Romano, Diagnosis of nonimmediate reactions to β-lactam antibiotics, Allergy, 2004.