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2024/02/26

細胞培養工程を含む最終製品の安全性について:組み換えタンパク質 FGF

ポイント
・再生医療等製品及び特定細胞加工物の安全性
・ヒト幹細胞由来培養上清液及びエクソソームの安全性
・組み換えタンパク質: FGF使用のリスク

第五回では、細胞培養培地に添加される代表的なタンパク質である線維芽細胞成長因子(FGF)の組み換え体の利用についてお話しします。FGFは、様々な細胞から分泌されるシグナルタンパク質で、これまでに22のリガンドが報告されています。細胞の増殖および分化や生存を制御しており、抗炎症、血管新生亢進などの効果を持ちます。1970年代にFGF1,2が発見されて以降、その効果を疾患治療へ応用するために臨床や研究現場において検討が行われてきました。現場での利用性向上を目的として、組み換えタンパク質の技術を使い人工的に作られたFGFが組み換えFGFです。臨床では、ヒトの臓器や組織における虚血性疾患の治療や創傷治療に利用されており、研究現場では細胞の多能性状態維持を目的として、細胞培養培地に添加されています。しかしながら、組み換えFGFはヒトの疾患治療や細胞培養に一定の効果はあるものの、前臨床試験において潜在的毒性を持つことも示唆されており、天然型と比較してその安全性に課題が残っています。再生医療製品の製造においても、上清液中に組み換えFGFが含まれるとヒトの身体に入った際に副作用が生じる可能性があります。

組み換えタンパク質: FGFを使用するリスク

組み換えFGF製剤を用いた治療では、発生頻度は低いものの、効果が大きすぎると病的な血管新生など全身性の副作用が引き起こされる可能性が示唆されています。1)組み換えFGFを再生医療製品に添加する際は、これまで報告されている副作用も踏まえて使用を検討する必要があります。

非標的細胞の血管新生

FGFファミリーの一種であるFGF2(bFGF)は、血管新生亢進作用を持つことから虚血性疾患の治療に使用されています。しかしながら、組み換えFGFによる治療は必ずしも臨床的に疾患の改善効果を示さず、全身投与の場合は非標的部位の血管新生を引き起してしまう可能性もあることが示唆されています。2)

炎症性応答

慢性炎症部位では、FGF2を含む血管新生因子の発現・分泌が増加していることが知られています。したがって、FGF2がヒトの身体に入った際に痛みやかゆみなどといった炎症性の反応が現れる可能性があります。3)

図1. FGF2刺激マウス肺微小血管内皮細胞における炎症関連遺伝子発現の経時的変化3)
低血漿培地中で培養したマウス肺微小血管内皮細胞をFGF2で刺激すると、炎症関連遺伝子の発現量が増加する。

セルプロ社製品の特徴

セルプロジャパン社では、最終製品に組み換えタンパク質が漏れ込む可能性を排除するために、独自製法による洗浄工程を設けています。その他、使用する培地や製造方法にも細心の注意を払っています。

【引用】
1) Richard Donnelly and Justin M C Yeung., Therapeutic angiogenesis: a step forward in intermittent claudication, Lancet, 2002.
2) Ronnier J Aviles et al., Testing clinical therapeutic angiogenesis using basic fibroblast growth factor (FGF-2), Br J Pharmacol, 2003.
3) Germάn Andrés et al., A pro-inflammatory signature mediates FGF2-induced angiogenesis, J Cell Mol Med, 2009.

セルプロジャパンとは

セルプロジャパン株式会社は再生医療を中心に
新しい医療の可能性を追求する企業です。
私たちの対象分野は再生医療、医薬品、化粧品など多岐にわたり、各分野における研究開発に日々取り組んでいます。

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